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「このままじゃ、持たない気がした」
そう思った夜があった。
理由は説明できるようで、
うまく説明できない。
ただ、
静かに限界に近づいていた。
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スマホの検索履歴が少しずつ変わっていく。
最初は「解決方法」だった。
そのうち、
言葉は短くなった。
そして最後に残ったのが、
“別の選択肢”
という曖昧な言葉だった。
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人は追い詰められると、
具体的な言葉を使わなくなる。
代わりに、
ぼんやりした逃げ道を探し始める。
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一度だけ、
別の場所に行ったことがある。
理由はシンプルだった。
もう無理だと思ったからだ。
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その時間は、
確かに“何か”を満たした。
でも終わったあと、
残ったのは別の種類の空白だった。
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満たされることと、
救われることは違う。
そのとき初めて、
それを知った気がした。
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静かな夜。
彼女はスマホを見ている。
僕は少し離れた場所にいる。
何も変わらない空間の中で、
考えているのは別のことだった。
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——このままでいいのか。
——でも、どうすればいいのか。
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答えは出ない。
出る気配もない。
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たどり着いた言葉は、
「メンズエステ」
最初は警戒だった。
次に興味。
そのあとに来たのは、
説明できない迷いだった。
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・癒し
・距離感
・非日常
それは“解決”というより、
別の逃げ道に見えた。
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選択肢が増えることは、
必ずしも救いではない。
時にそれは、
迷いを増やすだけだ。
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「行くべきなのか」
「やめるべきなのか」
どちらでもいいはずなのに、
どちらにも決めきれない。
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中途半端なまま、
時間だけが進んでいく。
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人は本当に追い詰められると、
決断ではなく“保留”を選ぶ。
そしてその保留が、
一番長く続く。
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スマホを閉じる。
何も決めていない。
でも、
何も知らなかった頃には戻れない。
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夜は静かで、
その静けさだけが、
やけに重かった。
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