Episode3「外の選択肢」

「このままじゃ、持たない気がした」

そう思った夜があった。

理由は説明できるようで、
うまく説明できない。

ただ、
静かに限界に近づいていた。

スマホの検索履歴が少しずつ変わっていく。

最初は「解決方法」だった。

そのうち、
言葉は短くなった。

そして最後に残ったのが、

“別の選択肢”

という曖昧な言葉だった。

人は追い詰められると、
具体的な言葉を使わなくなる。

代わりに、
ぼんやりした逃げ道を探し始める。

一度だけ、
別の場所に行ったことがある。

理由はシンプルだった。

もう無理だと思ったからだ。

その時間は、
確かに“何か”を満たした。

でも終わったあと、
残ったのは別の種類の空白だった。

満たされることと、
救われることは違う。

そのとき初めて、
それを知った気がした。

静かな夜。

彼女はスマホを見ている。

僕は少し離れた場所にいる。

何も変わらない空間の中で、
考えているのは別のことだった。

——このままでいいのか。

——でも、どうすればいいのか。

答えは出ない。

出る気配もない。

たどり着いた言葉は、

「メンズエステ」

最初は警戒だった。

次に興味。

そのあとに来たのは、
説明できない迷いだった。

・癒し
・距離感
・非日常

それは“解決”というより、
別の逃げ道に見えた。

選択肢が増えることは、
必ずしも救いではない。

時にそれは、
迷いを増やすだけだ。

「行くべきなのか」

「やめるべきなのか」

どちらでもいいはずなのに、
どちらにも決めきれない。

中途半端なまま、
時間だけが進んでいく。

人は本当に追い詰められると、
決断ではなく“保留”を選ぶ。

そしてその保留が、
一番長く続く。

スマホを閉じる。

何も決めていない。

でも、
何も知らなかった頃には戻れない。

夜は静かで、

その静けさだけが、
やけに重かった。

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