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「このまま何もしないのも違う気がする」
そう思ったのは、
特に理由があったわけじゃない。
ただ、
前の夜より少しだけ、
気持ちに余白ができていた。
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いつも通りの時間。
テレビがついていて、
部屋は静かで、
距離もいつも通りだった。
僕は少しだけ考えてから、
いつもと違う行動をした。
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「今日さ、ちょっと話そうかと思って」
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彼女はスマホから目を離さずに、
「なに?」
と言った。
その一言だけで、
続き方が分からなくなる。
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言葉というのは、
準備していたほどきれいには出てこない。
むしろ、
準備していた分だけ崩れる。
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水を流しながら、
さっきの続きを考える。
うまく言えなかった。
でも、
言わなかった頃よりは、
何かが少し違っていた気がする。
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——伝えるって、こういうことなのかもしれない。
はっきりした手応えはない。
ただ、
沈黙とは別の形の“ズレ”があった。
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「最近、どう?」
聞いたつもりだった。
でもそれは、
質問というより確認に近かった。
彼女は少し間をおいて、
「普通だよ」
と言った。
その“普通”が、
どこに向かっているのかは分からない。
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普通という言葉は便利だ。
でも時々、
一番距離を感じる言葉でもある。
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電気を消す。
同じ部屋。
同じ沈黙。
でも、
少しだけ違う。
今日は何も変わっていないのに、
何かを試した痕跡だけが残っている。
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それは成果ではない。
ただの“試行”だ。
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変わらないことに慣れるか、
変えようとして少し壊すか。
その間に、
正解はまだ見つかっていない。
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目を閉じる。
すぐには眠れない。
でも、
昨日ほど重くはない。
たぶんそれだけで、
今は十分なのかもしれない。
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